多嚢胞性卵巣症候群の治療法

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ガイドラインPCOSの治療については、根本原因が特定されていないため、対症療法をおこなっていくことになりますが、個人差も大きく、内分泌系などデリケートな部分に作用を及ぼしますので、専門医による精緻なモニタリングと細かなコントロールのもとでおこなわれる必要があります。自己判断で民間療法などに頼ることなどは避けるべきです。
基本的には、排卵障害をどのように修正していくかということになりますが、妊娠の希望の有無や年齢によって少し変わってくるようです。

PCOSに関する診断や治療について設定している日本産科婦人科学会の『産婦人科診療ガイドライン –婦人科外来編2014』によれば、

①同会による診断基準(2007年)に基づき診断

②妊娠希望がない女性には、

1)肥満があれば減量などの生活指導を行う
2)定期的な消退出血を起こさせる

③妊娠希望の女性には、

1)肥満があれば減量を勧める
2)排卵誘発にはまずクロミフェン療法を行う
3)肥満、耐糖能異常、インスリン抵抗性のいずれかを認め、かつクロミフェン単独で卵胞発育を認めなければ、メトホルミンを併用する
4)クロミフェン抵抗性の場合はゴナドトロピン療法または腹腔鏡下卵巣多孔術を行う
5)ゴナドトロピン療法ではリコンビナントまたはピュアFSH製剤を用い、低用量で緩徐に刺激する

(※「肥満」:BMI≧25kg/㎡)





②2)についてですが、PCOSでは無排卵のためにプロゲステロンが分泌されず、長期間にわたってエストロゲンだけが分泌される状態が続くため、子宮内膜にとって発がん環境となっています。そのため、20~30代の場合には、子宮体がんリスク回避のために定期的(少なくとも3か月ごと)に消退出血を起こさせるというものです。カウフマン療法、ホルムストルム療法、低用量/中用量ピル(経口避妊薬)などが用いられます。

③3)について、メトホルミンとはインスリン増感薬です。

③4)について、ゴナドトロピン療法は「hMG-hCG療法」とも呼ばれます。多胎と卵巣過剰刺激症候群(OHSS:強い排卵誘発刺激による卵巣の腫大、腹水、胸水等。重症の場合には入院加療が必要になる)が発生しやすいというリスクがあります。腹腔鏡下卵巣多孔術とは電気メスやレーザーによって卵巣表面に多数(一側につき50~80ヶ所)の孔を開けて排卵を促す外科的治療で、術後の排卵率や妊娠率はゴナドトロピン療法と同等とされます。ゴナドトロピン療法のような多胎やOHSSのリスクはない代わりに、効果の持続が短い(1~2年)場合があるといったリスクがあります。

指導肥満については、体重の5~7%の減量が排卵率および妊娠率の改善につながるとされています。また、40代以降については、肥満の有無を問わず、糖尿病やメタボリックシンドローム、心血管疾患、脂肪肝などの予防的観点から、減量や運動指導がなされます。

 

この他に、近年、未成熟卵体外受精(IVM-IVF)がPCOS患者に対する体外受精に関して成果をあげているようです。この方法のメリットは、多胎やOHSSのリスクを回避できること、患者の経済的負担も比較的小さくて済むことです。各種の方法を試みた後で用いられる新しい手法ですが、注目は高まっています。





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