多嚢胞性卵巣症候群の診断基準は?

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前項「多嚢胞性卵巣症候群の症状」で記したように、PCOSで発現する症候について、欧米のそれとは若干の違いがあることをふまえて、日本における診断基準を日本産科婦人科学会が設定しています。以下、同学会 生殖・内分泌委員会が、2007年に設定した診断基準に関して、概要を記します。

 

次の①~③をすべて満たすこと。

①月経異常
②多嚢胞性卵巣
③血中男性ホルモン高値 または LH基礎値高値かつFSH基礎値正常注1)月経異常は無月経、稀発月経、無排卵性周期症のいずれか注2)多嚢胞性卵巣は、超音波断層検査で両側卵巣に多数の小卵胞がみられ、少なくとも一方の卵巣で2~9mmの小卵胞が10個以上存在注3)内分泌検査は、排卵誘発薬や女性ホルモン薬を投与していない時期に、1cm以上の卵胞が存在しないことを確認のうえで行う。また、月経または消退出血から10日目までの時期は高LHの検出率が低い事に留意する

(※以下、原文、注4)~注6)については、ここでは記載を省略)

ポイントPCOSの診断基準については、同会が1993年に設定していましたが、研究報告や臨床現場における実態、検査環境の変化などをふまえて検討を加えたものになっています。

改定された重要な点としては、1993年版では参考値として必須項目に入っていなかった高アンドロゲン血症が加えられたこと、卵巣所見の数値基準を定めたことなどがあげられます。前者については、欧米での定義と足並みをそろえたという側面もあります。後者に関しては、他の排卵障害でも卵巣の多嚢胞性変化がみられることなどを考慮し、1993年版では現場に委ねていた部分を明確に定義したものです。

また、糖代謝異常やインスリン抵抗性については、診断基準に関しての扱いが検討されましたが、2007年版での項目追加は見送られ、将来への継続的検討課題とされました。





欧米でも診断基準の変更調整が行われ、ロッテルダム基準と呼ばれるそれは、

①稀発~無排卵
②臨床的または生化学的高アンドロゲン状態
③卵巣の多嚢胞所見

のうち、2項目を満たせばPCOSと診断しますので、該当範囲は日本のそれより広くなります。

ただし、PCOSの病態表現型や内分泌異常に関しては、人種的な因子が影響するうえ、臨床の現場においては、例えば、多毛ひとつをとってみても、正常範囲の定義が困難であったり、診察前に処理されている場合も少なくなかったりといった問題も存在するなど、非常にデリケートな性格も含んでいます。上記基準はあくまで専門家の検討による医学的基準として、参考までにとらえていただければと思います。

 

自己判断はもちろん禁物です。月経不順など少しでも心配があれば、早期に専門医に相談して適切な対応をとってもらうことが必須であることは言うまでもありません。





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